セルフエフィカシーとは何か

セルフエフィカシーを行動科学理論の枠組みで捉えるならば、たとえば、メタボ、糖尿病、歯周病などといったある状況の中で、その課題に対する健康行動を成功裡に遂行できるという見込み感、あるいは確信のことである。

このセルフエフィカシーは健康行動の維持、発展に強く関与していることが明らかになっていて、他稿で説明した計画的行動理論社会的認知理論においても援用されている概念である。社会的認知理論を体系化したバンデューラは以下に示す4つの情報源がセルフエフィカシーに影響しているという。

遂行行動の達成

ある行為に対する過去の成功体験や失敗体験のことで、直接的に遂行の程度に関する情報を与えてくれる最も強力で効果的な情報成分である。この情報を強化するには、成功体験を刷り込ませていくプロセスが重要であり、具体的には低すぎず高すぎない目標の設定がポイントである。

60~70%くらいは出来るだろうという確信の持てる目標を設定して徐々に強化していく。最初はハードルの低い目標であったのが、成功体験を繰り返すうちにセルフエフィカシーが強化され次第に目標のレベルも上がってくる。このようにスモールステップで一つ目標が達成されたら、次はそれより少しレベルを上げた目標を設定するといった要領で徐々に行動を強化していくのが望ましい戦略であろう。

代理的体験

観察学習と同様に、自分の置かれているのと同じ状況にいる他者の成功を目撃することにより得られる情報成分である。

言語的説得

ある行動を遂行するにあたって指導者から言語的に与えられる情報成分である。具体的にはある課題に対する理解、対処行動の必要性と有効性、さらにはその行動が出来るという自信を持たせるような教示のことである。

生理的、情動的喚起

たとえばメタボという状況でのダイエットという健康行動事態を考える。ある日体重計の数値が低く示されたという数値的な情報とは別に、階段を上るのが楽になった、パンツのウエストに余裕が生じたというような感覚的体験を通して得られる内部的な情報成分のことである。

ある健康行動に取り組み、継続、維持、発展させる際にはセルフエフィカシーを構成する以上4つの情報源に目を向けていただきたい。