社会的認知理論について
行動科学理論とは
人が自律的に健康を維持、増進していくことを目的としたある特定の行動(健康行動)が始まり、継続し、逆戻りしないようにするには、どのような意図的な働きかけが有効なのか。このことに対していくつかの理論が提示されている。
いずれも行動変容とその行動の維持、発展が研究のターゲットである。ここでは、その一つである社会的認知理論について概説する。
社会的認知理論について
社会的認知理論は行動科学理論の一つで、人の行動変容を社会環境的枠組みの中で捉えた理論である。
たとえば、ある地域でウォーキングをする人が増えてくる(社会的環境)と、それを見た別の人もやってみようかなと考える(認知)。そして実際にウォーキングという行動を開始する(行動)。
このように、人の行動、認知、社会的環境は相互に影響し合うという互恵的関係が強調されている。社会的認知理論における行動変容支援は以下のキー概念に基づいて介入される。
観察学習
糖尿病、メタボ、歯周病など同じ境遇にいる人たちのグループを想定する。構成メンバーの中のある人が成功裡に健康行動を継続している姿を目の当たりにする、あるいはその結果、達成できた体験談に触れることなどにより、同じグループに属する他のメンバーの行動変容を促すことになる。
セルフコントロール
自身で行動のコントロールを行うことで、自己監視を日々の記述によって行う。できたかできなかったか、継続時間、回数などを記録することによって、それが行動継続の拘束力を帯びてくる。また行動の促進要因や障壁要因が明らかになってくる。
刺激コントロール
たとえば、ウォーキングウェア、シューズを常に準備して目につくところに置いておくなど、注意を引くきっかけとなるアイテムつまりリマインダーをセットしておく。
自己報酬、罰の除去
たとえば、1ヶ月禁煙を達成できたら過去にその期間に要していたタバコ代で別の自己報酬を与えたり(自己報酬)。行動遂行の障壁になっている妨害因子を排除する(罰の除去)など。
セルフエフィカシー
ある課題に対して適切な行動を成功裡に遂行できるという予測あるいは確信のことで、計画的行動理論のところでも行動のコントロール感としてこの重要性について触れていたところである。
この行動遂行に対する見込み感としてのセルフエフィカシーという概念はあらゆる行動科学理論において重要視されているので改めて論じてみたい。