健康の定義について考察する
健康の定義については、世界保健機関(WHO)憲章前文、「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に良い状態を意味するのであって、ただ単に病気や虚弱でないというだけではない。」が代表的である。
オタワ憲章(1986)において健康とライフスタイルの関係をヘルスプロモーションとして以下のように定義した「ヘルスプロモーションとは人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセスである。」さらに健康について、「健康とは毎日の生活のための資源とみなされるものであって人生の目的とは思えない。」と位置づけられている。
また、病気と健康が連続的な概念であることはすでに多くの研究者より指摘されている。ロジャースは、健康状態は個人の遺伝と、これまでに蓄積され、また現在の心身に影響を及ぼすような環境との関数であるとして、完全に健康で幸福な状態と死とを両極とする連続体としての健康概念を提唱した。
一方で、病気とはどのように定義づけられるのであろうか。
サッチマンは医学的な実体としての疾病(disease)、社会学的な実体としての病気(illness)、感覚としてのその人の反応や病気に対する他人の反応としての病(sickness)として3つの用語の区別をした。さらにクライマンは疾病(disease)への影響要因としての社会、心理的問題、もう1つは個人の病気(illness)そのものと分類した。
以上のように健康と病気の概念をみてみると、少なくとも生物医学的な側面からだけで健康と病気を定義づけることには疑問が生じる。生得的に付随した病気、あるいは生活習慣病と共存しながらも充実した生活を送れることは健康な状態であると言わざるを得ない。
要するに健康とは、摂食、睡眠、排泄に問題がなく、疼痛もないかあってもコントロール可能であり心理的、社会的にも安定し、生きがいを持って充実した日々を送れる(QOL)ための重要な資源(手段)であるのではないかと考えている。